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AI契約レビューの「弁護士法グレー」は解消したか

法務担当者がノートパソコンでAI契約レビューの解析結果を確認しているオフィスの様子

「グレーゾーン」と呼ばれてきた背景

AI契約レビューサービスが法務の現場に広がり始めた当初から、必ずといってよいほど話題に上るのが「AIに契約書を審査させることは、弁護士法72条が禁じる非弁行為にあたらないか」という懸念です。SNSや業界イベントでは「まだグレーゾーンだから様子見」という声も聞かれてきました。この記事では、この「グレー」という評価が2026年9月時点でどこまで解消されたと言えるのか、法務省が公表している考え方を出発点に、断定を避けながら整理します。個別のサービスや契約書が適法かどうかを判断するものではなく、あくまで一般的な情報の整理である点にご留意ください。

そもそも「グレーゾーン」という言葉が使われてきた背景には、AI契約レビューサービスが登場した当初、この論点について行政や業界団体からの公式な見解がほとんど存在せず、各社が独自の解釈でサービス設計を進めざるを得なかった時期が長く続いたという事情があります。導入を検討する企業側も、参考にできる公式な整理がない中で、社内の稟議を通すために自前でリスク評価を行う必要がありました。

この「グレーゾーン」という言葉は、法務担当者だけでなく経営層やサービス提供事業者側にとっても、社内稟議やIR説明の場で繰り返し問われてきたテーマでもあります。特に、既に他社で導入実績のあるサービスであっても、自社の業種や契約類型によってリスクの捉え方が変わりうるため、「他社が使っているから安心」と単純に判断できない点も、議論を難しくしてきた一因といえます。

弁護士法72条が禁じていることの整理

弁護士法72条は、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件や非訟事件などの「法律事件」に関して、鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことを禁止する規定です。条文そのものは、e-Gov法令検索で公開されている弁護士法(昭和24年法律第205号)で確認できます。契約書のレビューという行為も、状況によってはこの「法律事務」に該当しうるため、AIを用いたサービスであっても無関係ではいられない論点とされてきました。

もっとも、この条文が想定しているのは、当事者間に具体的な紛争が生じている、あるいは生じる可能性が高い場面での「法律事務」の取り扱いです。日常的な契約書のドラフトチェックのように、紛争性を伴わない事務作業との性質の違いをどう整理するかが、実務上の焦点になってきました。

法務省の考え方公表でどこまで進んだか

この論点について、法務省は「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」という考え方を公表しています。詳細な内容は法務省ウェブサイトで確認できますが、この公表によって示されたのは、あくまで一般的な考え方の整理であり、個別のサービスや個別の契約書について「適法」「違法」を一律に判定するものではありません。この点は「グレーが完全に白になった」というよりも「グレーの中でも、どのあたりが比較的リスクが低いと考えられるか」という判断材料が示された、と捉えるのが実態に近いといえます。

整理の中で重視されている視点のひとつが、AIが提供するのはあくまで「一般的な確認事項の提示」や「参考情報」であり、個別の事案について法的な結論を断定するものではない、という位置づけです。サービスの利用規約や説明資料で、この位置づけが明確にされているかどうかが、実務上のひとつの目安として意識されるようになってきました。また、AIというシステム自体が法律事務の主体になるのか、それを運用する事業者が主体となるのかという「主体」の論点も、個別のサービス設計によって整理が異なりうるため、画一的な結論は出されていません。

この考え方の公表は、あくまで一般的な整理を示したものであり、個別のサービスや個別の契約書について「これは適法」「これは違法」と法務省が個別判断を下すものではありません。そのため、サービス提供事業者の中には、この公表を受けて利用規約や説明資料の文言を見直し、「参考情報の提示」という位置づけをより明確に打ち出す動きも見られます。導入を検討する企業側としては、こうした事業者側の対応状況そのものも、比較検討の材料のひとつになり得ます。

導入担当者が確認しておきたい点

以上を踏まえると、「弁護士法グレー」という評価は、公式な考え方が示されたことで「何を確認すればリスクを下げられるか」という具体的な着眼点に置き換わりつつある、というのが現時点での実態に近い整理です。実務上は、次のような点をサービス提供事業者に確認しておくと、社内での説明がしやすくなります。まず、そのサービスが「担当者の判断を支援する参考情報の提示」を目的としていることが利用規約や説明資料に明記されているか。次に、AIの出力について「法的助言ではない」旨の注記が明示されているか。そして、最終的な契約締結の判断は利用者側が行う前提で設計されているか、という三点です。

あわせて、契約書の内容が複雑であったり、紛争に発展する可能性がある取引であったりする場合には、AIによる一次チェックだけで完結させず、必要に応じて弁護士への相談を組み合わせることが望ましいとされています。AI契約レビューはあくまで「気づきを増やすための道具」であり、最終判断の主体は人であるという整理を社内で共有しておくことが、導入後のトラブルを避ける近道になります。弁護士法72条と法務省の考え方についてのより詳しい整理は、法務省ガイドラインと弁護士法72条の整理のページもあわせてご覧ください。

「グレーゾーンかどうか」という白黒の判定を求めるのではなく、「どの程度リスクを下げる設計になっているか」という濃淡で捉え直すことが、2026年9月時点での実務的な向き合い方といえます。制度面の整理は今後も更新される可能性があるため、本記事の内容も定期的に見直しを行う方針です。最新の考え方は法務省の公表資料を直接確認することをおすすめします。

なお、本記事で扱ったのは「AIを用いたサービスの提供」が弁護士法72条との関係でどう整理されるかという論点であり、利用者側の社内運用については別途の検討が必要です。とりわけ一人法務や法務未設置の企業では、AIの出力を二重に確認する体制がないまま事業部門に結果を渡してしまう運用に陥りやすいため、「AIの指摘を誰が確認し、どの範囲で採用するか」を短い社内ルールとして書き残しておくことが、制度面の整理とあわせて実務上の備えになります。

本サイトは法務AI・法務DXに関する一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。AIツールの出力は必ず専門家が確認してください。各社の料金・仕様は変更されることがあります。