マイクロソフトの法務AI「Copilot for legal」開始、契約審査の現場はどう変わるか

マイクロソフトの法務AI「Copilot for legal」開始、契約審査の現場はどう変わるかのイメージ

ニュースの概要

米マイクロソフトが、法務の仕事に特化したAIアシスタント「Copilot for legal」の提供を始めた。契約書の審査をはじめ、20を超える「スキル」(=あらかじめ用意された作業の型)を備えているという。契約条項の確認や、不利な条件の洗い出し、修正案づくりといった、法務担当者が毎日のように繰り返す作業を肩代わりする狙いだ。これまでの汎用的な対話AIから、職種ごとに仕立てた専用のAIへ。同社が進めてきたその路線が、いよいよ法務という慎重な分野にも及んだ形である。詳しい機能や対応言語、料金体系などは、利用を検討する企業が個別に確認する必要がある。

引用元: 米マイクロソフト、法務AI「Copilot for legal」を提供開始 契約審査など20超のスキル(ビジネス+IT)(Yahoo!ニュース)

分析・見解

「20のスキル」が示す、対話AIから作業部品への転換

法務AIというと、文章を自由に書いてくれる対話AIを思い浮かべがちだ。だが今回の肝は、契約審査などの作業を「スキル」という単位に切り出した点にある。スキルとは、手順と確認の観点をあらかじめ組み込んだ作業の型のことだ。利用者は毎回うまい指示文を考えなくても、「この契約書を自社の基準で確認する」と選ぶだけで済む。

これは、AI活用が「個人の腕前」に左右される段階を抜け、「組織の標準」に変わる合図とも読める。指示文の巧拙で成果が分かれるうちは、全社展開は難しい。型にしてしまえば、経験の浅い担当者でもベテランに近い手順をなぞれる。

法務が生成AIの主戦場になる理由と、配り方の勝負

法務は文書量が多く、書き方に一定の型があり、過去の事例が社内に蓄積されている。AIが得意とする条件がそろった分野だ。実際、リーガルテック(=法律分野のIT)では、米国の新興企業Harveyや、情報大手トムソン・ロイターのCoCounselなどが先行して専用AIを出してきた。

そこへマイクロソフトが入ってくる意味は、機能の新しさよりも「配り方」にある。多くの企業はすでに同社のメールや文書作成ソフトを使っている。そこに法務の専用機能が乗れば、新しい取引先を増やす手続きを踏まずに試せる。専門ベンダーにとっては、機能の深さだけでなく、導入の手軽さでも競う局面になる。

精度の高さより先に、責任を誰が負うかが問われる

一方で、AIが出した判断を誰が引き受けるのかという問題は残る。海外では、生成AIがでっち上げた存在しない判例を、そのまま裁判所に出した弁護士が制裁を受けた事例が知られている。契約審査は判例の引用ほど目立たないが、見落としの影響は後からじわじわ効いてくる。AIが「問題なし」と返した条項が実は問題だった場合、責任は人間の担当者に残る。

日本では弁護士法との関係も論点になる。自社の契約を社内で確認する使い方と、AIによる審査を外部に有料で提供する使い方では、法的な位置づけが異なる。2023年に法務省が、AIを使った契約審査サービスと弁護士法の関係について考え方を示したが、個別の事例では判断が分かれうる。

日本語の曖昧な契約表現をAIが読み解けるか

日本企業にとっての壁は、言語と商慣行だ。英文契約の定型条項は学習しやすい。だが日本の契約書には「誠実に協議する」といった幅のある表現や、取引先との力関係で決まる運用が多い。条文に書かれていない背景を、AIがどこまで補えるのかは、自社の契約書で試さないと分からない。機能の一覧表だけでは、この差は見えてこない。

ビジネスへの影響

まず試すなら、定型契約の一次チェックから

いきなり重要案件に使うのは避けたい。秘密保持契約や業務委託契約など、件数が多く型が決まっている契約から始めるのが現実的だ。AIには条項の抜け漏れの確認と、自社の基準との差の一覧づくりを任せる。最終判断は人が行う。営業部門が契約書を持ち込む窓口として、一次回答だけをAIに任せる運用も考えられる。この線引きを最初に社内の文書で決めておくと、現場が迷わない。効果は「審査にかかった日数」と「差し戻しの回数」で測るとよい。

導入前に確認したい、情報管理・言語・費用の条件

一つ目は情報の扱いだ。契約書は機密の塊であり、入力した内容がAIの学習に使われるのか、どこに保存されるのかを、契約書面で確認する。二つ目は日本語への対応で、自社の過去の契約書を数十件使った試験を勧める。三つ目は費用で、既存のライセンスに上乗せされるのか、別建てなのかを見積もる。削減できる人件費や外部弁護士への相談費用と並べて初めて、投資に見合うかが判断できる。

法務の仕事は、条文を読む役から基準をつくる役へ移る

スキルが標準になれば、法務の価値は条文を読む速さより、「何を許容し、何を譲らないか」の基準を言葉にする力に移る。この基準が曖昧な会社ほど、AIは的外れな指摘を連発する。逆に基準を整えた会社は、AIを入れる前から審査が速くなる。導入は、社内の契約方針を棚卸しする好機でもある。経営層は、ツールを買う前に、法務部門が基準づくりに時間を割ける体制になっているかを問うべきだ。

関連記事

本サイトは法務AI・法務DXに関する一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。AIツールの出力は必ず専門家が確認してください。各社の料金・仕様は変更されることがあります。